不動産ドットコム お役立ちコンテンツ
トップ原状回復について
敷金返還・判例によると…
 
はじめに…
 
トラブルの原因
 
ガイドライン
 
判例 その壱
 
判例 その弐
 
だれの負担?
 
東京ルール
 
対策
 
 
修繕費用を具体的に示した判例の一つで、貸主被控訴人)と借主控訴人)の主張の違いや、裁判所の判断基準など参考になると思います。
裁判詳細は、参考資料として下記に掲示しておりますので、是非そちらもご覧ください。
● H14.6.14  神戸地方裁判所  敷金返還請求控訴、同附帯控訴
被控訴人から建物を賃借していた控訴人が、賃貸借終了後に敷金から控除された敷引金の不当性を主張し、敷金の全額返還を求めた事案
  <争いのない事実>
(1) 本件賃貸借契約の締結
平成7年7月9日、借主(控訴人)は貸主(被控訴人)との間で賃貸借契約を締結し、その引渡しとともに、敷金として70万円を貸主(被控訴人)に交付した。
 
― 賃貸借契約内容 ―
ア 賃貸借期間 平成7年7月13日から同9年7月末日まで。
ただし貸主及び借主双方に異議がないときは、2年毎に更新される。
イ 賃料 1ヶ月 7万6,000円 (ただし平成9年7月から、1ヶ月8万円)
ウ 支払方法 毎月末日限り 翌月分前払い
エ 敷金 70万円 (敷引金28万円)
オ 敷金の返還等 (ア) 被控訴人は、本件賃貸借契約が終了し、控訴人が被控訴人に対し本件建物の明け渡し及び本件賃貸借契約に基づく債務の履行を完了した後1ヶ月以内に、敷引金28万円を控除した残額を控訴人に返還するものとする (以下「本件敷引約定」という)。
(イ) 上記(ア)において、控訴人に、本件賃貸借契約に基づく債務の不履行があるときは、被控訴人は何時にても、敷金を前項の返還金額の限度内でその弁済に充当することができる。ただし控訴人からこの充当を請求することはできない。
(2) 控訴人は、被控訴人との間の本件賃貸借契約を解約することとし、平成12年11月25日ころ被控訴人にその旨を通知し、同年12月24日本件建物を明け渡した。
(3) 控訴人は、被控訴人から敷金のうち15万7,007円の返還を受けた。
  <本件敷引約定の内容>
  本契約解約時に、敷引金として、敷金から28万円を控除した残額を借主に返還する。
  借主の債務不履行があるときには、敷引金控除後の返還金額内で、敷金をその弁済に充当できる。
  <敷引約定の有効性>
  貸主(被控訴人)の主張 ―――――
本件敷引約定による敷引金は、賃貸借契約締結時に発生し、自然損耗による修理費等に充当されるものとして、賃貸人の所得とすることが合意されたもの。
したがって、これを賃借人に返還する必要はない。
  借主(控訴人)の主張 ―――――
本来、敷金は賃貸借契約期間における未払賃料や建物を毀損した場合に、修理費用等に充当するものとして預けたものである。
しかし、本件敷引約定に基づく敷引金28万円の使途及び性質については、契約時に何も説明がなく、契約書にも記載がないため、本件敷引約定は不合理であり、無効である。
  <敷金から控除できる修繕費用>
  貸主(被控訴人)の主張 ―――――
自然損耗等による修理費用は被控訴人において負担すべきものである。
本件建物の汚損は、明らかに自然損耗の範囲を超えた、控訴人の故意・過失又は保管義務違反による
  汚損である。

したがって、その補修に要した費用合計26万2,993円は控訴人が負担すべきものであり、敷金によって充当されるべきである。
  借主(控訴人)の主張 ―――――
敷金は、自然損耗以外の最小限必要な箇所の修繕費用にのみ充当されるべきものである。
賃貸人は賃借人に対し、残りの敷金全額を返還すべきである。
本件建物は、建築から控訴人退去時まで約8年が経過し、リフォームの時期を迎えていたといえる。
本件建物を通常の方法で使用し、損耗は自然損耗の範囲内のため、負担すべき修繕費用は発生しない。

被控訴人は、和室・洋室・台所・玄関等の壁及び床を張り替える等ほぼ全面的な修繕を行い、その要した費用26万2,993円を不当にも敷金から控除したものである。
  <争点・敷引金と自然損耗の範囲>
1 敷引約定の有効性は妥当かどうか

2 損耗箇所が、通常の使用によって生じる自然損耗を超えた保管義務違反によるものか否か
  <裁判所の判断>
1 一般的に、敷金の一部を敷引金として、使途・性質の明示なく賃貸人が取得する敷引約定はよくみられる。

  敷引金には更新料、修繕費など様々な用途があり、渾然一体のものとして、一定額の金員を賃貸人のもの

  とする合意がなされたという合理性があるため、特段の事由がない限り有効といえる。

2 下表参照
貸主(被控訴人) : 貸主(被控訴人)の主張     借主(控訴人) : 借主(控訴人)の主張     裁判所 : 裁判所の判断
損耗箇所 損耗の状態 損耗回復の程度・借主の負担
和室襖 貸主(被控訴人) 控訴人の落書きによる汚損、4枚 張り替えを要した
借主(控訴人) 落書きで汚したのは襖1枚 補修費用は500円
裁判所 落書きが認められる襖は1枚
その他の襖  控訴人の過失の証拠なし
費用は5,250円
(5,000円×1及び消費税)
郵便ポスト 貸主(被控訴人) ドアに引っかける部分の破損 取り替えを要した
借主(控訴人) 控訴人において破壊していない
裁判所 破損状況から、
郵便ポストを取り替えざるを得ない
費用は9,450円
(9,000円及び消費税)
敷居
リアテックシート
貸主(被控訴人) 敷居の角の部分の破損 張り替えを要した
借主(控訴人) 破損があったとしても通常損耗の範囲
裁判所 破損の程度を明らかにする証拠がない 通常の使用の範囲を超える破損であるかの否かを確定できない
ハウス
クリーニング
貸主(被控訴人) 控訴人に対し退去時にはハウスクリーニングを求めたが、なされなかった 台所(1万円 税別)、トイレ・風呂・換気扇・洗面器(各5,000円 税別)
借主(控訴人) 原状回復義務の範囲外
通常の清掃はしていた
裁判所 控訴人が手入れ・清掃を怠った結果、
通常の使用による汚損の程度を超える
清掃費用は3万1,500円
(台所1万円、トイレ・風呂・換気扇・洗面器各5,000円×4及び消費税)
浴室コーキング 貸主(被控訴人) 目地部分のカビによる汚損 コーキングのやり直しが必要であった
借主(控訴人) 通常の自然損耗である
裁判所 カビ等の発生はあったとしても、コーキングのやり直しまで必要だった証拠はない 費用を控訴人が負担すべきものとは認められない

(全6畳の内3畳)
貸主(被控訴人) シミ等により裏返し使用ができない 表替えが必要であった
借主(控訴人) 通常の自然損耗である
裁判所 自然損耗の程度を超える染みは畳1畳にしか認められない 費用は4,305円
(4,100円及び消費税)
ダイニング
キッチン床
貸主(被控訴人) 赤い落書きがあり、拭き取り不可能 張り替えを要した
(14.5u中、7.5uの費用を負担すべき)
借主(控訴人) 赤い汚れは落書きでなく、食器棚の跡
 通常損耗である
裁判所 赤い落書きは1u四方内にとどまる
その他の汚損は、家具の設置跡と推認
費用は4,200円
(4,000円×1u及び消費税)
ダイニング
キッチン壁
貸主(被控訴人) 青の落書きがあり、拭き取り不可能 張り替えを要した
(31u中、16uの費用を負担すべき)
借主(控訴人) 落書き等の汚損はない
裁判所 青の落書きがあると認める証拠はない
黒ずみはあるが、自然損耗による汚れ
費用を控訴人の負担とすべき証拠はない
洋室床 貸主(被控訴人) 青い落書きがあり、拭き取り不可能 張り替えを要した
(7.5u中、3.5uの費用を負担すべき)
借主(控訴人) 落書き等の汚損はない
裁判所 青い落書きは1u四方内にとどまる
その他の汚損は、家具の設置跡と推認
費用は4,200円
(4,000円×1u及び消費税)
洋室壁 貸主(被控訴人) 落書きがある 張り替えを要した
(29u中、14uの費用を負担すべき)
借主(控訴人) 50p四方の落書きがある程度 張り替えを要しても、
壁紙代として500円にも満たない
裁判所 青色及び赤色の落書き、茶色のシミは1u四方内にとどまる 費用は1,260円
(1,200円×1u及び消費税)
洗面所床 貸主(被控訴人) 紫色に変色した部分の汚損 張り替えを要した
(3.5u中、1.5uの費用を負担すべき)
借主(控訴人) 紫色の汚れは、入居前からあったもの
裁判所 紫色に変色した汚損は1u四方内にとどまる 費用は4,200円
(4,000円×1u及び消費税)
洗面所壁 貸主(被控訴人) (26u中、8uの費用を負担すべき)
借主(控訴人) 汚損していない
裁判所 自然損耗を超える汚損等があることを認める証拠はない
玄関床 貸主(被控訴人) 落書き又はシール跡があり、拭き取り不可能 張り替えを要した
(4.5u中、3uの費用を負担すべき)
借主(控訴人) 除去可能のはず
裁判所 シールをはがした跡及び変色部分は1u四方内にとどまる 費用は4,200円
(4,000円×1u及び消費税)
玄関壁 貸主(被控訴人) 落書きがある 張り替えを要した
(19u中、10uの費用を負担すべき)
借主(控訴人) 落書きはなく、他に汚れがあったとしても
 通常損耗である
裁判所 落書き及びシミないし茶色の変色は1u四方内にとどまる 費用は1,260円
(1,200円×1u及び消費税)
和室壁 貸主(被控訴人) 落書きがある 張り替えを要した
(37u中、19uの費用を負担すべき)
借主(控訴人) 落書きがある 壁紙代にして500円程度である
裁判所 落書き及び鉤裂き等の破損は2u四方内にとどまる 費用は2,520円
(1,200円×2u及び消費税)
結論 貸主(被控訴人) 控訴人に対し、敷金70万円から敷引28万円及び補修費用26万2,993円を控除した15万7,007円を既に返還済みであるので、控訴人に対し返還すべき敷金は存在しない。
借主(控訴人) 被控訴人に対し、敷金70万円から返還済みの15万7,007円を差し引いた54万2,993円の支払いを求める。
裁判所 被控訴人は、控訴人に対し、
敷金70万円から、敷引金28万円、既に返還済みの敷金15万7,007円及び上記認定の修繕費用合計7万2,345円を控除した19万0,648円について返還義務を負う。
※参考資料  神戸地方裁判所 裁判例 平成13年(レ)第130号 平成14年(レ)第18号 敷金返還請求控訴、同附帯控訴 より
※参考サイト 裁判所
トップへ戻る トップへ戻る 回復義務・だれの負担?